こんにちは。ドメです。

久々にリペアの依頼がきたので備忘録的に書いておきたいと思います。
今回はこちらのブログを見たお客さんより、是非リペアをということでお引き受けいたしました。




【FURAMAN HR-6のガリのリペア】

FURMANの名機であるキューボックスHR-6という機械。
スタジオでの使用率はいまだ高く、生産中止となっているにもかかわらず依然人気は高いようです。
ですが、修理してくれるところも今はあまりないようで、今回の依頼となりました。


今回はキューボックスのボリュームノブにガリが出ているのでなんとかしてほしいという依頼。
応急処置的には接点復活剤で処理するのが有名ですが、根本解決にはならなさそうでしたので、部品の交換をすることにしました。




まずは修理箇所の確認と分解


furmanのキューボックhr-6の修理箇所を確認します。。
自宅にはキュー・ボックスを確認できる環境はないので、オーダーを受けた状態で場所の確認をします。キュー・ボックスの一番右のボリュームツマミにガリが出ているとのこと。



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写真のように修理箇所を目視でわかるようにしておいてもらえると間違えるリスクを減らすことができます。ありがとうございます。




まずは筐体のネジをはずし、部品が取り外せるところまで持って行きます。






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基盤が出てきました。
交換するのは一番右側のボリュームポットです。





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写真の一番手前のボリュームポットが修理箇所。
ピンぼけしていますが"A 10K"と記載があります。
10KのAカーブという種類のボリュームだということがわかります。


ボリュームにはAカーブやBカーブなどがありますが、これはボリュームのツマミを回した時にどのような上昇をするかというところに違いがあります。
抵抗値の変化と聴覚上の聴こえ方には違いがあり、記事を書いている人によっても、製造しているメーカーによっても差がありますので、ここは素直に同じ種類のパーツに交換することにしました。




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そして上記の写真からもう一つわかること。
ボリュームポットが基盤に直接はんだ付けされています。
つまり、基盤取り付けタイプのボリュームポットが望ましいということです。



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ギターなどではボリュームポットの足に配線して自由な長さで配線できますが、基板取付タイプなので寸法がシビアということですね。





部品の買い出し


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少々、破壊気味に取り外した部品です。買ってくる部品としては下記の部品となります。

  • ツマミの高さが決まっていて
  • 足が6本有り。(他のツマミは足は3本)
  • 基板取付タイプ
  • 10K Aカーブ



というわけでいつものように秋葉原のパーツ屋へ。
がっ、大概のものが揃うパーツ屋を3店舗回ってもその要件を満たすパーツに巡り会えず、店員さんにも"このサイズは無いねぇ。だいぶ珍しいですよ"と言われる始末。どうやら市場に出回っていないようです。
ビンテージ系の機械であれば世界中のパーツ屋を探し回ったりして同一の年代、同一のパーツを揃えるというのもあるのですが、そこにかけるコスト、そこにかける時間、これからのメンテを考えるとビンテージ系の機械でもないかぎり、あまり建設的ではありません。
市場に出回っているパーツで同一の機能が満たされて問題なく動くというのが現実的かと考えています。
そんなわけで秋葉原の店員さんにも相談しつつ、市場に出回っているパーツで工夫をすることに。





【取り付け】
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ツマミを同一のものを使いたかったのもあり、まずはほぼ同一サイズではあるが基板取付タイプでないものを試してみます。基盤取り付けタイプではないので配線材を使用して結線。



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次に配線材を保護する意味合いも兼ねてホットボンド(グルーガン)で保護。
これで筐体に戻そうとしたのですが、配線材の厚み、ホットボンドの厚みが邪魔をして蓋が綺麗にしまりません。逆に言えば、それぐらいギリギリの寸法で作られているのです。




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市場に出回っている基盤取り付けタイプのボリュームポット。
足は6本あるのですが、FURMAN hr-6の足の間隔はもっと広いのでサイズが合いません。
仮にこれがうまくはまったとしても、ツマミのサイズが異なるので今までのものは使えず、別のツマミを取り付けることになるので、見た目が大きく変わります。






うーん。どうしたものか。と悩んでいたところ、かつてのメンバーとの飲みのお誘いが入り少々飲みに行ってきました。実に会うのが15年ぶりでしたが、時間を感じさせない会話は高校生の頃の自由なバンド生活が濃かったせいかもしれません。
お金もなかったけど自分達で工夫してライブやバンドやってたよねぇ。
なんて会話をしてたわけですが、"工夫"という言葉でピンときました。




今の発想は市場に出回っているものを取り付けようとしている。

だけど市場のものでは"サイズが合わない"or"配線的に無理がある”

"工夫"をして部品を加工して取り付ければいいのではないか?




という発想。です。工事現場の職人時代もそうでしたが、こういう時は作ればいいのです。
職人は道具から作るという発想ですね。(しばらく離れてたらすっかり忘れてた。)




というわけで、部品を加工することにしました。








【コンデンサの足を利用して加工】
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部品に工夫をということで、先程の基盤取り付けタイプではないが、サイズが合っているものを加工することにしました。
基盤に当たりそうな部分をカットし、コンデンサの足を利用して部品を作ります。



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適度な硬さ、適度な加工のしやすさがあるので、多少、融通をきかせることができるのがコンデンサのなど電子部品の足の部分。長過ぎる足はカットするのですが、それがけっこう自宅のリペアボックスに余っていました。





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というわけで、加工した部品を使って取り付けました。
これでも足のサイズはきっかり同じではないのですが、多少の曲げの融通が効くのがコンデンサの足。
無事に筐体におさまるところまでもっていけました。




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この写真でいうと一番左側のツマミが交換部品です。
シャフトの長さは多少短いですが、見た目を変えずに同じ機能を保たせることができたので一安心。



この後、お客さんの元に郵送し、動作確認をしてもらったところ、無事に動いたとのことで連絡をもらいました。無事に動いて何よりです。
修理完了!ありがとうございます。









【思ったこと(勝手に予想)】
パーツの供給というのは市場に大きく左右されます。
同一サイズのパーツが手に入らなければ、メーカーは市場に出回っているパーツに合わせて設計を変えて新商品を出すか、今回のように部品を加工する必要があります。
ですがこれをメーカーが手工業でやっていたのでは採算がおそらく合わない。というので廃盤になっていくのかなぁと勝手に予想しています。
最近では特にそうなのですが、他の機材のメーカーも修理が来ると、半田で修理したりはせず基盤ごと交換という流れのようです。たしかにそちらのほうが時間的にも早いですものね。そちらのほうが人件費的にも安いので安く供給できる。

というわけで基盤と向き合ったりするのはブティック系のメーカーとか、街の工房とかなのかもしれません。今回も勉強になったリペアとなりました。









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